私の中で、映画「インターステラー」の考察はまだ続いています。
この映画は、重力波を世界で初めて検出した功績でノーベル物理学賞を受賞したキップ・ソーン博士の科学考証に基づき作られたということですが、繰り返し、観れば観るほど内容が示唆に富んでいて、非常に面白いです。
地球の未来と政治や一般ピープルのあり方への物理学者のクールな視点も随所に感じます。
そして、人間への洞察、人知を超えるものへの視点やロボットへのユーモアと愛も感じます。
実際、この映画に出てくるロボットはシンプルな四角い形で、それがとてもうまく動くように考えられていて驚きました。
ユーモアのセンスも抜群で、観ているうちにとても愛すべき存在になっていきます。
これを観ていると、ロボットやAI戦争という考え自体がナンセンスのように感じますね。
攻撃してくるという考え自体が人間のエゴの賜物なのでしょう。
考えてみれば、感情がなく、論理的に考えるロボットにはそんなエゴは出てくるはずがないように思えます。
実際、映画の中に出てくるロボットは悲しいぐらいに誠実でした。
また、物理学者のクールな視点を感じたのは地球の未来の設定です。
地球では、やがて植物が育たなくなり、空気は酸素が少なくなって人間は餓死するか、窒息することは逃れられないことになっています。そうなると、食糧問題のほうに全てのエネルギーが使われ、軍事は二の次になり、宇宙開発への投資も社会が許さないようになる。
映画の中では、アメリカとインドの軍は10年前に廃止されたという設定でした。
軍事がなくなるというのはいろんなSF映画を観てきましたが、この映画が初めてです。
人間はそこまで追い込まれないと利権争いをやめないという皮肉が込められているように感じます。
そして、未来への希望もなくなり、すっかり競争意欲もチャレンジも開拓精神も失くしてしまった人々。
でも、主人公の父親は「昔は毎日がクリスマスで、新しい発見に満ちていた。人々は日々競争に明け暮れていたが、今のような競争のない世界もいい」という言葉も出てきます。
さらに、この映画では、人知を超えることを二つの視点で扱っているなと思いました。それは、ブラックホールと愛です。
ブラックホールの中に入れない人間にとって、そこはまさに未知の世界。
そして、愛というものも、人間がつくったものではないが、感知できるものとして、人知を超えていくためのに必要なものとして扱われています。
人知を超えるといとうと、遠く遥か彼方に答えがあるように感じますが、ブラックホールを重力と考えると、重力も愛も人間のすぐそばにあるもの。ただ、理解するのが難しいんですね。
あまりにも近すぎて当たり前にありすぎて、理解できないものが本当は全てを教えてくれているんだと言われているようです。
私たちは、遠くばかりを追い求めすぎているのかもしれません。
キップ・ソーン博士が、この映画に出てくることを詳しく解説している本を見つけました。
白揚社からでている『ブラックホールと時空の歪み』です。二段組みでかなり分厚い本ですが、一般向けに書かれた本なので、とても読みやすいです。この本のプロローグに出てくる内容が、まさに映画の設定の中で出てきたことでした。この後の章には、アインシュタインやいろんな物理学者のことが出てきます。
私は物理は全く分かりませんが、物理学者の考え方は知りたいと思います。
物理学者の考え方はとても効率的で建設的だと思える部分もあれば、理論を結果に合わせていくようなところには反発したくなって、気持ち悪い部分があります。
でも、普段私が考えないような視点をもらえるととても刺激的で希望すら感じます。
それと同じように、、それぞれの専門知識はわからなくても、数学者の考え方、哲学者の考え方、医学、宗教、経済学者の考え方、いろんな人の「考え方」に興味があります。
それぞれ得意な考え方を駆使すれば、きっと未来は開けるのではないかと思っています。
しつこいようですが、インターステラーの考察はまだつづくと思います。