本日は、岸見一郎先生のオンライン講演会でした。

岸見一郎先生の講演会は5年ほど前から主催させていただいております。

岸見先生のお話をできるだけたくさんの人に届けたいという一心でやってきましたが、毎月先生のお話が聴けるチャンスをいただけているのは、本当は私自身です。

有難いなあと思います。

岸見先生のお話は、思考が本当に変わります。私たちが慣れ親しんだ思考の方向性とあまりにも違うので、私も、一度きいただけではその本当の意味がつかめないという経験をしてきました。

最初はまだ、自分の思考の方向性で聴くので、岸見先生の話されていることを従来の思考で解釈してしまうんですね。

それでいいと思って対処していると、そのうちなにかが違うなと思い始めます。

そして、またお話を聴くと、以前聴いたことがあるお話の違う側面が見えてきます。

あれ、そういうことだったのか?

と思い、また試してみるんですが、それもまだまだ自分の解釈になってしまっていることに気づきます。

何回も何回も少しずつ少しずつ、気づかないうちに積み上げてきたものがあるんだなと、ある時気づきます。

いままで思ったこともなかった捉え方ができた瞬間。

私の中で、やはりそんな瞬間がありました。その中でも一番大きなものは、現在大学生の長男との関わりの中であったことです。

長男は小さいころから友達と遊ぶのが大好きで、友達に誘われると嫌と言えないような子供でした。

それも、友達に合わせていくので、はたから見ていると振り回されているように見えるんですね。

学校の先生にもそのように映っていたようで、懇談などで度々指摘されたことを覚えています。

私も同じことを感じていたので、この子の先を案じて、不安に感じていました。

高校生になって始めたバイトも帰ってくるのが夜中になります。仕事はとっくにすんでいるのに先輩たちとしゃべっていたといいます。

家を出かけるとき、たいてい夜家でご飯食べるから作っておいてほしいとわざわざ言っていくんですが、友達と会うと帰ってきたためしがありません。

そのうち、私の方も、作っても食べられることはないので、もし帰ってきたら作ろうということになり、

やっぱり帰ってこないので、作らなくてよかったという日々になっていきます。

家族に言って出かけたことが、すぐに友達との約束で変わってしまう。

これはほんの一例です。

これ以外にも多々ありますが、そのたびに注意すると、その時は、わかった、次からは気を付けるといいます。それでも、それが改善されることはありません。

そんな感じなので、私には、ますます優柔不断な人間に見えてしまって、この先こんなことで大丈夫だろうかという心配はずっとありました。

 

そんな中、岸見先生のお話を聴きはじめたのは、彼が高校に入った年でした。

そのおかげで、私の彼への働きかけが大きく変わったのは言うまでもありません。

そうなると、自然、関係性もかなり変わり、いろんなことが改善されていきました。

それでも、彼の優柔不断だという印象だけはその後も変わることはありませんでした。

 

それが、ある時ふと思ったんです。

 

どんなに注意しても、その時は柔らかく同意して、本当に納得しているように見える。

でも、行動をみていると最初自分でやっていたことを何一つ変えていない。

これが、今まで私には優柔不断に見えていたんですが、いやいや、これって、全く私に影響を受けていないということじゃないか。

どんなに、誰に何を言われても、自分がやろうと思ったことをやり通しているじゃないか。

もしかしたら、優柔不断などではなく、ものすごく強い意志と行動力を持っているということなのかもしれない。

 

そうなると、今まで感じていた不安が嘘のようになくなりました。

友達に振り回されているのではないかと思っていたことが、自分の強い意志でやっているなら、こちらが心配する必要など何もないことになります。

なにより、本人はとても楽しそうです。

行動的ということで、本人的にいろいろ失敗もありますが、それも、全部自分で対処できています。

必要な時には、大人の知恵もかりながら。

 

これは、長男の成長の話ではなく、私の成長の話です。

はたから見たら、私の気づきなど当たり前のことに感じられるかもしれませんが、私にとっては、本当に目が覚めるような晴天の霹靂でした。

否定的な見え方が肯定的な捉え方に変わるとは、私にとってこのようなことです。

私のネガティヴな主観からの捉え方が変わったのは、彼の私への反応より、彼の行動そのものが見えてきたからでしょう。

きっと、岸見先生が度々お話されていた、「その人の言葉より、行動に本当の欲求が現れる」ということが、私のなかに残っていて、それが、やっと納得できるレベルで私の中に落とし込まれた瞬間だったのだとおもいます。

長男に関して、まだまだ心配ごとはありますが、以前のような不安はなくなりました。

それほど、自分の子供が、ちゃんと自分の意志で行動しているということは親にとって安心材料なのでしょう。

 

そんな長男も、就職するか、大学に残るかという選択に悩んだとき、私に相談を持ち掛けてきました。

私は少し助言もしましたが、ふと、このことを思い出し、こういいました。

「いままで、どんなに他の人が注意や意見をいっても、絶対自分のしたいようにしてきたんだから、今どんなに悩んでいても、結局あなたは自分の選ぶべき道を選ぶと思うよ」と。