岸見先生の『人生は苦である。でも死んではいけない』という本を読み直してみました。
ある方と話していて、その方のテーマに繋がることとして、岸見先生がいつも話されている「生産性で人の価値を見ない」ということが出てきたのと、そこに行き着く難しい判断の話がどこに書いてあったかなと思ったからなんですが、私にとってもこの話は岸見先生の哲学の中で特に影響を受けた話です。
この本の中では、その視点から、倫理的にも本当に難しい問題に真っ向から斬り込んでいるなと思います。
それも対岸の安全なところからの視点ではなく、日常の真っ只中で起こるところから。
この本を読んでいて思うのは、文章を読むことでその苦しみを読み手も感じさせられるということです。
答えの出ない難しい判断の中に放り込まれ、気がついたら著書と共に考えている。
対岸から見ている時、知らず知らずに自分だったらそんなことしないとか、今の自分には関係ないと誰しも思ってしまうと思うんですが、岸見先生の本は「自分がその立場だったら」という視点を突きつけてくる。
そこからスタートする考えこそが、
日常に根づいた哲学だと思うんですよね。
私がコーチングの講座で国際コーチング連盟の倫理規定を扱う時にみなさんにお伝えしているのは、プロとして難しい判断を迫られる時に、たった一人で決断していかないといけない時が必ずあるということです。
正しい一つの答えがあるとは限らない。何を選択したとしても、それが相手やお互いにとってどっちに転ぶかわからない。
良かれと思って決断したことでも結果的に望んでいない方向に行くことはある。
そんな時最終的に自分を助けてくれるのは、いかに悩み、いかに自分の良心に正直に、誠実に判断したか、ということに尽きると。
それでも、何もないところで判断することはできない。
独善的になることから誰しも逃れることができない中で、その指針になるのが倫理規定であり、契約とかのためだけでなく、プロとしてどうあるかという倫理だと思うんですよね。
岸見先生の哲学は、日常の中で、本当はたくさんある、常に判断しなければならない問題を、一般的な価値観や常識に逃げるのではなく、自分で判断することを助けてくれるものだと思います。
写真の本は、去年の3月にコロナ禍でリアルの講演会を中止にした時に、周知が上手くいかず会場に来られる人がいた場合、お詫びに進呈しようと買い込んでいた本です。
幸い誰も間違えて来る人はいなかったのですが…
その2か月後にオンライン講演会をスタートさせ、スタッフのみなさんと一緒に毎月開催してきました。
今では、誰でもどこからでも参加しやすいオンライン講演会が当たり前の感覚になってきて、まだ一年しか経ってないのは不思議な感じです。
日々の生活で、ほんの些細なことであっても、自分で判断するのは難しい。答えを自分なりに出す前に、独善的にならないよう、一緒に考えてもらえるような。
しかも、岸見先生が強い味方になってくれる。
そんな場所を提供し続けていけたらと思っています。
ついでに宣伝
10/3(日)13:30〜16:30
『嫌われる勇気』岸見一郎講演会〜全ての喜びは対人関係から〜
https://www.kokuchpro.com/event/kishimiadler10321/
11/9(火)19:00〜21:00
岸見一郎先生と語る会〜アドラー哲学質問の夕べ〜
https://www.kokuchpro.com/event/katarukai110921/